曲作りをしていたら、人生だった。
人生は、大きな選択で決まると思ってた。
人生って、もっと大きな選択で決まるものだと思ってました。
進学とか、就職とか、結婚とか。
でも違った。
毎日の「好き」の積み重ねが、人生を作ってた。
何かに夢中になってる時間は、余白じゃなくて、本編だったんです。
俺の場合、それが曲作りでした。
【なぜ曲作りなのか】
そりゃ、ミュージシャンだからですよ。
俺はギターを弾く人なので、当然、音楽で人生を語ることになる。
でも考えてみると、みんなそうなんですよね。
絵描きなら、絵で人生を語る。
特に油絵。何度も塗り重ねて、失敗した部分の上からまた塗る。あの工程が人生に似てるからです。
ランナーなら、マラソンで語る。
焼き物をやる人なら、土を練るところから窯を開けるところまで、全行程を人生になぞらえる。
つまり、人が選んだ仕事や趣味は、その人にとっての人生そのものなんですよ。
そして面白いことに、どれも必ず、過去・現在・未来に分かれてる。
昔の思い出を語り、今のレベルを確認し、未来を想像する。
自分の来し方行く末を、その「何か」に当てはめて考えてるんです。
【没頭は、余白じゃない】
ここ、少し理屈の話をさせてください。
「フロー」という言葉があります。
ハンガリー出身の心理学者、ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念です。
彼はシカゴ大学で、芸術家、音楽家、科学者、スポーツ選手を対象に調査をしました。
そこで発見したのが、これです。
創造的な活動や、高度な技術を要する作業に没頭しているとき、人は疲労を感じにくく、時間の経過も忘れ、持続的な満足感を得られる。
この状態を、彼は「フロー」と名付けました。
面白いのは、対象に音楽家が入ってることですよね。
俺たちがスタジオで時間を忘れてる、あの状態のことを、ちゃんと研究してた人がいたわけです。
ついでに言うと、心理学には「自己効力感」という考え方もあります。小さな達成の積み重ねが、「自分はできる」という感覚を育てるというものです。
内閣府の調査でも、趣味や生きがいがある人は、ない人に比べて生活満足度が高いという結果が出ています。
つまり、好きなことに没頭する時間って、人生を良くする科学的な行動でもあるわけです。
暇つぶしでも、逃避でもない。
【留守番電話に、鼻歌を吹き込んでいた】
俺の話をします。
ギターを始めたのは、中学の時でした。
で、好きなロックバンドって、大体ギタリストが作曲してるんですよ。
リーダーだったりもする。
だから俺、完全に思い込んだんですよね。
「ギターを始めたってことは、俺が曲を作るんだ」と。
でも、始めたばかりなので、当然弾けない。
コードを押さえて曲を組み立てるなんて、できるわけがない。
ピアノも弾けない。
じゃあ、どうするか。
鼻歌しかないんですよ。
大学ノートに走り書きで歌詞を書いて、鼻歌でメロディをつける。
当時はジュン・スカイ・ウォーカーズが大好きだったので、それっぽい曲を作ってました。
録音機材もないから、家の留守番電話に、自分の声で歌って吹き込んでたんです。
今思うと、すごい方法ですけど。
でも、あれが俺の作曲の始まりでした。
【毎日、頭の中で鳴っている】
「毎日ギターに触っていた」という感覚は、正直ないです。
そこまで真面目じゃなかった。
でも、頭の中では毎日、何かしら鳴ってるんですよ。
メロディが勝手に流れてくる。
誰かの曲がふと浮かんできて、気づいたら鼻歌で歌ってる。
これ、たぶん一生続くんだと思います。
つまり、「やっていた」というより、「離れられなかった」に近い。
好きなものって、そういうものなんじゃないでしょうか。
【一曲に、一ヶ月かかった】
自分の人生観が変わった曲があります。
初めて、本格的にレコーディングスタジオで録ろうと決めた一曲です。
これが、全然録れなかった。
問題は、ミスじゃないんですよ。
テンポがずれる、演奏をミスる。それはその場で録り直せばいい。
そうじゃなくて、音が綺麗に出ないんです。
一つ一つの音が、クリーンに鳴らない。
ギターも、ベースも、ドラムも、全部です。
ボーカルはまだいいんですよ。楽器じゃないので、完璧に綺麗な音というものがない。むしろそこに味が出る。
でも楽器は、ごまかせないんです。
だから、家に帰って練習し直して、また集まってスタジオに入って、また帰って練習して。
結局、スタジオには三回入りました。
一曲録るのに、一ヶ月かかったんです。
最後は、「ここまで」と決めた期限のギリギリで、なんとか録り終えました。
で、録り終えて思ったことがあります。
うまくなったんじゃない。
音の精度が上がったんです。
テクニックが上がったわけじゃないんですよ。
一音一音の質が変わった。
そうしたら、バンド全体のグルーヴが出るようになった。
なんというか、格が上がった感じでした。
あれは、今でも忘れられません。
【どんな場面にも、曲がついてくる】
考えてみると、人生のどの場面にも、必ず曲が絡んでます。
夏になれば、サザンオールスターズやTUBEが流れてくる。
遊んでる時のBGMとして、勝手に鳴ってる。
夏フェスに行ったり、野外ライブに自分たちも出たり。
高校の時は、夏休みにバンド大会に出てました。
思い出を掘り返すと、必ずそこに音が鳴ってるんですよ。
だから俺にとって、音楽は趣味じゃない。
俺の人生を録音してきたテープみたいなものなんです。
【大きな選択より、毎日の「好き」】
ここまで書いてきて、はっきりしたことがあります。
人生って、何か大きなことを成し遂げて変わるものじゃない。
毎日の「好き」を積み重ねた結果、気づいたら形になってるものなんです。
俺にとっては、それが曲作りでした。
鼻歌を留守番電話に吹き込んでいた中学生が、一曲に一ヶ月かけるようになって、今もこうして音の話を書いている。
大きな決断なんて、一度もしてないんですよ。
好きだから、続けただけです。
そして、これは誰にでもあると思ってます。
趣味でも、仕事でも、何でもいい。
その人が没頭できる何かは、必ず人生そのものになる。
【あなたの「それ」は、何ですか】
もし今、何かに夢中になっているなら。
それはもう、あなたの人生の一部です。
余白じゃない。本編です。
大きな選択より、毎日の「好き」を大事にしてください。
もし、まだ自分の「好き」が見つからない。
夢中になれるものがわからない。
やりたいことはあるけど、一歩が踏み出せない。
そんな時は、一人で考えなくても大丈夫です。
一緒に、あなたの音を探しにいきましょう。
今、noteで「Re:BOOTセッション」をやっています。
よかったら、覗いてみてください。
止まってもいい。音を止めなければ、道は続く。
ぶっさん



